再生医療(バイオセラピー)について

保存療法・バイオセラピー・手術療法のフロー図

      

 当院では再生医療である下記の2種類のPRP療法を行っております。
 再生医療とは、人間に備わっている自己再生能力を利用し、損傷した組織などを再生・修復する医療のことです。
 例えば、従来の変形性膝関節症の治療は軽度であれば保存療法、重度であれば手術療法が行われてきました。再生医療は、その中間に位置する治療法の選択肢として注目されています。

 

 

PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)療法とは?

  

 血液中に含まれる血小板は、血管が損傷したとき損傷した場所に集まって止血をしますが、その際に多量の成長因子を放出します。この成長因子には、組織を修復する作用があります。

 PRP 治療とは、PRPに含まれる成長因子の力を利用して、人が本来持っている治癒能力や組織修復能力・再生能力を引き出す治療で、ご自身の血液を使用するため身体に及ぼす負担が少なく、拒絶反応やアレルギーが起きにくく副作用が少ない治療法です。

 

 

APS(Autologous Protein Solution:自己蛋白質溶液)療法とは?

  

 PRPをさらに特殊加工することで、抗炎症性サイトカインと軟骨を守る成長因子を高濃度に抽出したもので、次世代PRPとも呼ばれており、関節痛や炎症の軽減、軟骨の変性や破壊の抑制が期待でき、欧州では1回の注入で最大24カ月間にわたり疼痛と機能の改善がみられたと報告され、国内でも6-12か月間疼痛が軽減したと報告があります。

 比較的症状が軽い変形性膝関節症では、主に運動療法やNSAIDs内服など薬物治療が行われ、関節症の進行とともにヒアルロン酸注射などが行われていますが、効果の減弱や、さらに変形が進行すると骨切り術や人工関節置換術などが行われてきました。このAPS療法は、中等度の関節症に対して手術に代わる、先延ばしできる可能性のある新しい治療法になると考えています。

 一般的に1 週間~6ヶ月で組織修復が起こり、治療後 2 週間~3ヶ月に効果の出現が期待でき、また繰り返し治療を行うことも可能です。すべての変形性関節症に適応があるわけではなく、内側半月後根断裂や半月内方逸脱、軟骨下骨脆弱性骨折、骨壊死など比較的早期に変形が進む疾患には適応が低く手術治療を優先しますので、投与前にはMRIで精査をします。関節外科医による診断、手術を含めた治療をシームレスに行えます。

 おおむねテニス肘、ゴルフ肘(上腕骨骨内側・外側上顆炎)、アキレス腱炎・付着部炎、足底腱膜炎、膝蓋腱炎、肩腱板炎など筋・腱・靱帯損傷にはPRP療法を、変形性関節症(主に膝、股関節)にはAPS療法を考えています。いずれも採血から精製、注射まで約1時間で行えますので日帰り治療が可能です。

 ただ、PRP療法、APS療法ともに現在のところ保険診療としては認められておらず、自由診療で行われています。

 

 

治療の方法について

【治療の流れ】下記①から③の3つのステップで進められます。

① 採 血
ご自身の血液を採血します。

② PRP抽出
専用の機器で採血した血液から分離し
PRP(多血小板血漿)を抽出します。

② 施 術
患部に生成したPRPを注入。
(すべての治療は当日中に完了します)

GPSⅢシステム(PRP療法)

1.採  血:

1キット約26mlまたは52mlの血液を採取します。

2. PRP分離:

採取した血液を、人への治療に使用することが認められた医療機器である本治療専用の遠心分離機と専用チューブを用いて遠心しPRPを精製抽出します。加工されるPRPは3mlまたは6mlです。

3.施  術:

患部へPRPを注入していきます。

APSキット(APS療法)

1.採  血:

1キット約55mlの血液を採取します。

2. PRP分離:

採取した血液を、人への治療に使用することが認められた医療機器である本治療専用の遠心分離機と専用チューブを用いて2度遠心分離し、より高濃度なPRPを精製抽出します。加工されるPRPは2.5mlです。

3.施  術:

患部へPRPを注入していきます。


※採血量は関節部位により選択致します。
※PRP投与後、約30分院内で安静にして頂いた後、ご帰宅となります。
※治療当日の激しい運動や飲酒、マッサージなど治療部位に刺激が加わるようなことはお控えください。また、治療部位の感染を防ぐため、当日の入浴はお控えください。

 

治療の効果とメリットについて

  • 患者様ご自身の血液を用いる為、感染やアレルギー反応などの副作用のリスクが極めて少ない治療法です。
  • 自己血液から簡便に調整ができ、日帰りでの処置が可能です。
  • 採血と注射で完了する治療なので、年齢の上限制限はありません。
  • 治療痕が残りにくく、何度でも治療を受けることができます。

 

治療の欠点と副作用(デメリット)について

  • 患者様ご自身の血液を使用するため体調や年齢などに左右され、場合によっては安定した効果が出にくいといった欠点があります。(治療効果・効果の持続期間には個人差があります)
  • 施術時、患部への注入には痛みを伴うことがあります。
    採血部位・治療部位に皮下出血が起こる場合があります。
    ※注射による腫れ・痛み・熱感・内出血など生じる恐れもありますが、一時的なものです。
  • 症状が強く出た場合はご相談ください。腫れや熱感を早く改善するためには、クーリング(冷やすこと)をお勧めいたします。
  • 本治療では最大で55mlの血液を採取します。これは一般的な採血検査よりも多い採血量ですが、通常の献血量である200ml、あるいは400mlに比べて少量となります。しかし、患者様によっては採血に伴いふらつきや気分不快などがごく稀に起きる場合があります。
 

再生医療PRP療法費用について

  治療費(1回) キャンセル料
APS療法 330,000円(税込) 230,000円(税込)
GPSⅢ療法 110,000円(税込) 77,000円(税込)
関節外1部位につき 110,000円(税込) 77,000円(税込)

※再生医療PRP療法は自由診療です。保険診療の対象外のため、自費診療となります。
また、途中のキャンセルはキャンセル料がかかる場合があります。

 

最後に

当院では“再生医療等の安全性確保等に関する法律”に基づき、厚生労働省への届出施設となっています。
詳細は整形外科の月・水曜日午後の専門外来まで宜しくお願いします。