治療法・実績データ

乳腺科

取り扱い疾患

具体的疾病名・症状
乳がん診療を中心に、乳腺症、乳腺炎、良性乳腺腫瘍など

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主な手術数

平成19年度

乳腺
区分 疾患 手術数
悪性 乳癌 77例 乳房温存手術 29例
乳房切除 48例
(77例中64例でセンチネルリンパ節生検を実施)

乳がんの診断

乳がんの診断はまず視触診と各種画像診断(マンモグラフィ検査、超音波検査、MRI検査など)をおこない、最終的には細胞診や組織診で確定します。

マンモグラフィ

マンモグラフィとは乳房専用X線撮影のことで、小さなしこりや乳がん初期症状の一つである微細石灰化を写し出して早期発見を可能にします。

図)マンモグラフィの石灰化で発見された早期乳がん。砂粒のような白い斑点が石灰化

マンモグラフィ検査では乳房を二枚の板で圧迫し、平たく引きのばした状態で撮影します。この際に痛みを伴うこともありますが、圧迫はできるだけ少ない放射線被曝で小さながんを見落とさないためにどうしても必要なことなのでご容赦下さい。

超音波検査

乳房に耳では聞こえない音(超音波)をあてて、乳房内部から反射してくる音を画像として表示します。検査は乳房にゼリーを塗り、器具を乳房の上で動かすだけで、マンモグラフィのような放射線被曝や痛みはありません。

図)超音波検査で写し出された乳がん

マンモグラフィ検査は石灰化を目印として早期がんの発見に威力を発揮しますが、乳腺の発達した30〜40歳代の女性の乳がん診断に多少難があります。超音波検査は若年女性の乳がんの診断にも威力を発揮しますが、石灰化を見つけ出すことは通常困難です。マンモグラフィ検査と超音波検査はそれぞれ異なる特性を持っており、がんの見落としを少なくするためには両方の検査を受けていただくことが重要です。

MRI検査

MRIは磁気を利用して体の断面を画像化する検査で、造影剤を点滴しながら撮影します。MRI検査の目的は造影剤の染まり具合でしこりの良悪性を鑑別することと、乳がんの広がりを正確に把握することです。乳房温存手術の適応を決める上で重要な情報を提供します。

図)MRIで写し出された乳がん
マンモグラフィでははっきりしない乳がんが、MRIでは明瞭に写し出されています

細胞診

マンモグラフィ、超音波検査、MRI検査などでがんが疑われる場合には、病変に細い注射針を刺して細胞を吸引し、顕微鏡検査をおこないます。

組織診

細胞診で診断がつかない時にはより大きな標本を採取して顕微鏡検査をおこなう必要があり、これを組織診といいます。組織診には太い針を用いる針生検と、メスで切開する外科生検があります。当科では新しい針生検方法であるマンモトーム生検をおこなっています。この方法の利点はメスによる生検のような大きな傷跡を残さずに正確な診断が可能なことです。

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乳がんの治療

手術

1990年頃までの乳がん手術の原則はできるだけ大きく取るということであり、乳房、筋肉、リンパ節がひとかたまりに切除されていました。その後、大きく切除しても治癒率に影響のないことが明らかにされるとともに、早期乳がん症例が増えてきたため、切除範囲は小さくなってきました。現在の標準的な手術方法は胸筋温存乳房切除手術と乳房温存手術です。

胸筋温存乳房切除手術

大胸筋と小胸筋を残して、乳房全体と腋のリンパ節を摘出する方法です。

図) 乳房切除手術(左乳がん)

当科ではがんが乳頭におよんでいない限り乳頭も残した乳房切除手術をおこなっており、乳房の小さな方であれば左右差はあまり目立ちません。

図) 乳頭を温存した乳房切除手術(右乳がん)

乳房温存手術

乳房の一部分と腋のリンパ節を摘出する方法です。

図)乳房温存手術(右乳がん)

当科ではできるだけ美しい乳房を残すため、小さな切開から内視鏡を用いてがんを切除する手術もおこなっています。

図) 内視鏡を用いた乳房温存手術(左乳がん)

乳房温存手術は美容的に優れていますが、がんを取り残す危険性があり、すべての乳がんに実施できるわけではありません。通常、表に示す方に適応があります。

表) 乳房温存療法の適応(標準的な乳房温存療法の実施要項の研究班、2005年3月)

1 腫瘍の大きさ 大きさ3cm以下。良好な整容性が保たれるのであれば4cmまで可
2 年齢 問わない
3 リンパ節転移の程度 問わない
4 乳頭-腫瘍間距離 問わない
5 多発病巣 二個以上の病巣が近くに存在しても、整容性と安全性が保たれるのであれば可
6 乳管内進展の画像評価 マンモグラフィの広範な石灰化などを認める場合は不可
7 手術後の放射線照射 乳房温存手術後の放射線照射は原則実施

たとえ適応を満たした方でも、温存した乳房にもう一度がんを発病すること(乳房内再発)があります。欧米の研究では手術後10年間で約10%の人に乳房内再発がおこるとされ、乳房温存を希望する方には乳房内再発の危険性を認識していただく必要があります。

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乳房温存手術を目的とした術前化学療法

これまでしこりの大きな場合に乳房温存手術の適応はありませんでした。最近、まず抗がん剤治療をおこない、しこりを小さくしてから乳房を温存する「術前化学療法」が普及してきました。当科では3cm以上のしこりで乳房の温存を強く希望する方へは術前化学療法を実施しています。

図)術前化学療法前後のMRI。4cmの乳がんが1.3cmまで縮小しています。

乳房切除手術後の乳房再建

乳房切除後には「家族や友達と温泉に行けない」、「水着や大きくカットの入ったドレスを着られない」といった悩みがつきません。当科では乳房切除を受けていただく方に乳房再建手術を提案しています。まったく元通りの乳房を作ることは困難ですが、再建手術により乳房を失う精神的苦痛は軽減されると考えています。

図)左乳房切除後、人工乳房による乳房再建

リンパ節に対する手術 腋窩リンパ節郭清とセンチネルリンパ節生検

乳がんの多くは進行すると腋のリンパ節(腋窩リンパ節)に転移します。手術前にリンパ節転移があるかどうかを正確に診断することは困難なため、これまでの乳がん手術では腋窩リンパ節をすべて取り除くこと(腋窩リンパ節郭清)が標準的な方法でした。

図)腋窩リンパ節

腋窩リンパ節郭清後には腕のしびれ、痛み、腫れ(リンパ浮腫)といった合併症がしばしば発生します。また、早期乳がんでは大半の方にリンパ節転移はなく、本来このような方にとって腋窩リンパ節郭清は不必要な手術です。

図)乳がん術後の右腕リンパ浮腫

当科では手術前に腋窩リンパ節への転移がないと予想される場合、腋窩リンパ節郭清ではなく、センチネルリンパ節生検という手術をおこなっています。腫瘍から最初のリンパの流れを受けるリンパ節がセンチネルリンパ節であり、このリンパ節だけを取り出してがんの転移を調べることをセンチネルリンパ節生検と呼びます。これまでの臨床試験で、センチネルリンパ節に転移がなければ、非常に高い確率でその他のリンパ節に転移のないことが確認されており、腋窩リンパ節郭清の省略が可能となります。センチネルリンパ節生検ではリンパ浮腫などの合併症はほとんどおこりません。

図)センチネルリンパ節

図)センチネルリンパ節生検の実際
青い色素で染まったセンチネルリンパ節

手術後の薬物療法

乳房のがんは手術や放射線治療で取り除くことができます。しかし、乳がんと診断された時点ですでに全身へ微小ながん細胞がひろがっている方がいます。このがん細胞が数年の経過で大きくなり、「転移(再発)」となるわけです。
手術後に微小がん細胞を根絶やしにして再発を予防するためにおこなわれるのが術後薬物療法であり、具体的には抗がん剤治療(化学療法)とホルモン療法があります。化学療法やホルモン療法にはいろいろな種類があり、それぞれの病状に応じてどのような薬剤の選択が相応しいのか判断されます。当科では世界的なガイドライン(ザンクト・ガレン国際会議勧告やNCCNガイドライン)に準じた治療方法を第一選択として実施しています。

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